
【USATODAY】米ネブラスカ州リンカーンに暮らすブライス・メレン君(17歳)は、ビデオゲームの達人である。例えば"モータル・コンバット"といったゲームに熱中し、ゲームセンターを訪れては軽々と敵のプレイヤーを打ち倒す。ちょうど同じ年頃の少年達に多い、熱心なゲーマーなのである。しかし、彼はある一点において、他のゲーム好きの少年達とは、大きく異なっている。彼は、生まれながらにして盲目なのである。「自分がスーパー・プロフェッショナルだとは思いません。もちろん負けることだってありますから。」
メレン君はにこやかに笑い、謙遜してそう語る。しかし彼にとって、ゲームのコントローラーは今や身体の一部のような存在なのだという。
例えばメレン君が"ソウル・キャリバー2"をプレイするならば、彼の"分身"とも言うべきキャラクターは画面の中の敵キャラクターを無慈悲なまでに、正確に切り裂いていく。そして笑って言うのだ。「もうこのゲームには飽きちゃいました。」
メレン君は先天的な盲目症状(レーバー病)を患って生まれた。しかし彼は幼い頃から、入院している他の患者や外来の人々を相手にビデオゲームを夢中でプレイし続けた。そしていつしか、彼は視覚に頼らずに、様々なゲームにおけるジョイスティックの操作方法を学習し、もっぱら音声を頼りに、そのスキルを磨き続けてきたのである。最初は"スペース・インベーダー"や”アステロイド”といった古典的なゲームからスタートし、徐々に現代的な格闘ゲームへとプレイの幅を広げてきたという。
「実際のところ、自分でも、一体どうやってプレイしているのか良くわからないんです。自分を超えた何かかもしれません。」ゲームをプレイしながら、彼は取材に答える。もちろん、テレビ画面からは目を背けたままである。
メレン君が初めてビデオゲームをプレイし始めたのは、彼がまだ7歳の頃だという。「息子は・・ビデオゲームに挑戦するのをとても楽しんでいるようでした。最初はもちろん、まるでダメでしたけどね。それでも、息子は諦めずに挑戦し続けました。そしてその頃には幾つものコントローラーを潰していましたね。」
彼の父親ラリー氏がそう語ると、メレンは笑って肩をすくめた。「最初の頃は、随分ムキになってやっていました。僕とコントローラーが上手く繋がらなかったんです。」そう言ってメレンは"ソウル・キャリバー2"を再びプレイしはじめる。タイトル画面で如何に操作すべきか、そんなことが彼にとって朝飯前なのは言うまでもない。
そしてゲームが始まるなり、対戦相手の友人、ライアン君がメレン君に聞く。「どこへ逃げたらいいの?」ライアン君の操作するキャラクターは画面の隅に追いやられているのだ。「もう逃げられないさ。」そう言ってメレン君はとどめを刺す。
「いつもこうなんです。だからメレンとはプレイしたくないんですけどね。」画面の中で崩れ去る自分のキャラクターを見つめながら、ライアン君は冗談めかして言う。
一体いかにしてメレン君がこのような技術を習得したのか、それは彼自身のみならず、父親にとってもまた謎なのである。「息子は、いつもそこに座って、ただ上手くいくまで何度も何度も繰り返してやるんです。今までにゲームが難しいだとか、一度も文句を言った事がないですね。」
このところ、メレン君は最近出来たばかりの大きなゲーム・センターに足繁く通っているという。彼がゲーム台に座るなり、盲目である彼を見て対戦相手が手を抜こうとするのは言うまでもない。しかし、それが大きな誤算だと気づくのに、時間はかからない。
「いつも誰かに挑戦したくなるんです。もっとも、それが挑戦すべきほどの相手だった場合だけですけどね。後ろを向いてプレイすると、みんな驚きます。今は、ビデオゲームより好きなものはありません。」彼は自信たっぷりに言う。
来年、高校の卒業控えるメレン君は、卒業後、一年ばかり休暇を取る予定である。そして大学に入学し、ビデオゲーム制作について学びたいと、未来の抱負を語っている。