NullPointerException

雑記
「暗号解読 - エニグマの解読者が失われた聖杯の謎に挑む」


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【scotsman】聖杯というものをご存知だろうか。聖杯とはキリストが処刑される直前、かの有名な「最後の晩餐」で使ったと伝えられる聖なる杯である。この聖杯はこれまで多くの学者や騎士たちがその行方を探し求めるなど、様々な逸話を持つ伝説的な杯として知られている。そしてこの度、第二次世界大戦中、あのナチスドイツの開発した暗号機「エニグマ」を解読したことでその名を知られる英ブレッチリー・パークの暗号解読研究所メンバーらがこの聖杯が眠る場所を指し示すと言われる暗号の本格的解読作業に乗り出した。今回解読者が挑戦する暗号は英スタフォードシアの羊飼いの記念石碑に刻まれた謎の碑文である。1748年に建立されたと言われるその大理石碑はリッチフィールド卿の庭園内に位置し、フランスの画家ニコラス・プッサンの絵画を鏡像にした図と共に「D.O.U.O.S.V.A.V.V.M」という不可解な文字列が刻まれている。

また今回のこの解読プロジェクトには既に引退した暗号解読専門家オリバー・ローン氏(85)とその妻シーラも協力することを約束し、石碑を見た印象を語っている。ローン氏はケンブリッジ大学で数学を学び、その後大戦中はエニグマの解読に従事した人物である(現在ではエニグマの解読が世界大戦の終結を二年早めたと言われている)。

「この碑文の解読には水平思考と同時に古典の学習が必要とされるでしょう。まずはシャグバラー(リッチフィールド卿邸宅)の過去から何か手掛かりを探そうと思います。」現地を訪れたローン氏は初見の印象をそう述べている。

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またブレッチリー・パーク所長クリスティーン・ラージさんは「碑文自体は明らかに古典的なものです。ラテン文字か、ギリシャ文字で、そして何か過去にあった出来事を描いています。また描かれている絵は非常に面白い。一体何故、鏡像で描かれる必要があったのか、その点は特に興味深いですね。」と述べ、鏡像された絵が多くの示唆を解読者に与えるはずであると話している。(写真は実際に大戦中使われたエニグマ)

これまでの推測ではまず刻まれた碑文はそれ自体一切の意味はなく、単に後世の人間をからかうためのものであるという説、そしてもう一つは碑文それ自体には直接的な意味はなく、さらにどこかに隠された別のメッセージの解読の鍵となるという説が上げられている。またラージさんはもしも刻まれた文字が誰かから誰かへと特定の人物に向けられたものである場合、解読作業は非常に困難を極めるであろうと予測している。

「おそらくこの碑文の解読には様々な言語知識が要求されると思います。ギリシャ語、あるいは既に失われた言語、さらに言語マッピングの技術、数学やパズルの知識もね。それにもちろん一番重要なのは常にオープンマインドな姿勢で解読作業に挑むことだと思っています。」

また彼女は今回の解読作業にあたり、一般からの協力も広く募集する予定である。

「今回の解読作業はその進展状況、問題点をワークショップなどで伝えて行くつもりです。老若男女問わず多くの人に話を聞いてもらい、様々なバックグラウンドを持つ人々から広く手掛かりを集めたいと思っています。私たちのエニグマを解き明かすためにね。」

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またシャグバラーのジェネラルマネージャー、リチャード・ケンプ氏は解読に当たっては単に石碑だけでなく庭園全体を考慮しなければならないだろうと話している。(写真は石碑に描かれた鏡像画)

「ブレッチリー・パークの解読者達も石碑の文字は単に並べられた文字ではなく、その位置、さらに羊飼いの石碑の角度、周囲のもの、庭園の全てが重要であると話していましたね。更に彼らは石碑に登りたいなんて話していました。何か重要なものが見つかるのではないかとね。」

更にケンプ氏によれば、かつてシャグバラーを建設し、石碑の製作を依頼したアンソン家は、聖杯伝説にまつわる多くの逸話を持つテンプル騎士団と強いコネクションを持っていたと話している。

「この石碑が、古来から世界最大の謎のひとつである聖杯の在処を指し示していると言われてきたことは事実です」。ケンプ氏は語った。