今からおよそ2億3000万年前に誕生し、その後1億数千万年前にわたって地球上を支配し続け巨大生物、恐竜。今回はこれまでの恐竜のイメージを一新する最新の研究報告を紹介。
最新の恐竜研究 @外見
2002年、中国・遼寧省で発見された小型肉食恐竜の化石に、「羽毛」の痕跡が残されていた。これにより恐竜は鳥の祖先である可能性が非常に高まった。さらに、古生物学者の福田芳生氏によると、肉食恐竜と鳥類との骨格の共通性や、進化の過程で枝分かれしていった時期を踏まえると、ティラノサウルスの体が鳥のようにフサフサの羽毛で覆われていたとしても不思議ではないという。また鳥の祖先である可能性から推測すると、例えばティラノサウルスの体はカラフルな色をしていたかもしれないという。
最新の恐竜研究 A知能
従来、恐竜は爬虫類のように知能は低く、単独で生きる社会性に乏しい生き物と考えられてきた。ところが、1978年、アメリカモンタナ州で発見された恐竜「マイヤサウラ」の卵や子供の恐竜の化石がこの考えを覆すこととなった。実はこの子供の恐竜の化石は、まだ足の発育が不十分で歩く事ができなかったにもかかわらず、その歯は食べ物をかみ砕いていたことですり減っていたのだ。これは、親がまだ歩けない子供にえさを与え、子育てをしていたということを示す、重要な証拠であると考えられた。これによって、恐竜は家族性や母性をもった、社会的な動物であるという説が唱えられている。
最新の恐竜研究 B行動
これまで、ティラノサウルスが獲物を狩るときの走るスピードは時速60〜70キロの猛スピードであると推測されていた。だが、クイーンズランド大学のリチャード・サルボーン博士が、ティラノサウルスの運動能力を科学的に分析し、走行スピードを割り出したところ、なんと、ティラノサウルスは最大で時速23キロしか出せなかったことが判明したのだ。
また、従来のイメージでは、ティラノサウルスは狩りを行う獰猛な恐竜であると考えられていたが、実際には狩りをせず、死肉を食べていただけなのかもしれないという説も唱えられている。
さらに、これまでのイメージを根底から覆す、信じがたい仮説がある。それは、「巨大恐竜は立ち上がることができなかった」というもの。アメリカのコンピューターエンジニア、テッド・ホールデン氏が、恐竜の体重と最大筋力を、生物学の「2乗3乗の法則」にそって計算した。
この「2乗3乗の法則」とは、例えば生物の身長が2倍になると、「最大筋力」は筋肉の断面積に比例するため、2の“2乗”の4倍になるが、「体重」は体積に比例するため、2の“3乗”の8倍にもなるという法則で、この法則によると、最大筋力は体重よりも大きくなりにくいことになる。
そしてホールデン氏の計算の結果、体重32tにもなる巨大恐竜アパトサウルスは、自分の体重を支えられず立ちあがることができなかったというのだ。これは体重32tに対して、最大筋力がそれを下回る31tという計算になるためである。しかし、巨大恐竜の足跡の化石は多数残されているため、歩いて生活していた事は事実。 では、この矛盾はどのように説明されるのか。
杏林大学保健学部の嶋津秀昭教授によると、「恐竜が生きていた頃の地球の重力が今よりも小さかった」と考えればこの矛盾が解決し、巨大恐竜が立って動き回ることができるという。確かに、恐竜が生きていた約1億年前の重力が現在の半分だったと仮定すると、32tの恐竜は体重が16tとなり、最大筋力は31tでも、動き回る事が出来る。
そして、宇宙航空開発研究機構の安部正真氏によれば、過去に地球の重力が変化していた事実はあるという。地層の分析により、6億年前の地球は、現在よりもずっと早く自転していた事が分かっている。そこから計算すると、46億年前の地球は現在の5倍ものスピードで自転していたと考えられている。自転速度が速い場合、遠心力が大きくなるため、結果的に重力は小さくなる。よって、46億年前の重力は、赤道付近では、現在よりも約10%小さかったと計算されるのだ。そこで恐竜の生きていた時代に重力が小さかったという可能性は考えられないだろうか。しかし、安部氏によると、恐竜の生きていた約1億年前の自転速度は、現在とほとんど変わらず、したがって、重力も現在とほぼ同じだったと推測されるという。
残念ながら、巨大恐竜が立てなかったという謎は、振り出しに戻ってしまった。だが、かつて地球の重力が変化していたということは紛れもない事実。今後、恐竜時代に重力が小さかったという証拠が見つかる可能性も否定できない。 近い将来、古生物学や物理学の発展が恐竜の謎を解いてくれるかもしれない。